「迷った時は高い方を買う」は正しい戦略なのか

「迷った時は高い方を買うといいんだよ」と言う人が稀によくいる(?)のですが、これを言っている人たちは本当にこの言葉の意味を理解しているのかということに疑問を感じたのでこの記事を書きます。

まずこの言葉の意味を考えます。

「迷った時は高い方を買うといい」という言葉だけを見ると、これは「迷った時に安い方を選ぶより高い方を買う方が合理的」という意味のように思えますが、もし本当にそうならこの言葉は間違いです。
なぜなら、選択肢の中からどれを選ぶか、なかなか決められないほど迷う状況なら、どちらを選んだら最終的な効用(経済学的な幸福度)が高くなるかはわからないからです。

たとえば、あなたはカレー屋さんで1000円のカレーライスと1200円のエビフライカレーのどちらを選ぶか悩んでいたとします。
カレーライスを選べば効用は100、エビフライカレーを選べば効用は120になるとします。
ここで頭が硬い人はエビフライカレーを選んだ方が効用が大きくなるので、「高い方を選ぶ」が合理的だと思ってしまうのでしょう。

でもそんなに問題が単純ならそもそも悩んだりしませんよね。
あなたがカレー屋さんで悩んだ時、あなたは差額の200円で買うものを意識しています。
つまり比較しているのは100の効用と120の効用ではなく、[カレーライス(値段1000円:効用100)]+[商品X(値段200円:効用Y)か[エビフライカレー(値段1200円:効用120)]かだということです。
※実際はもっと大きな買い物の足しにする場合もありますし、逆に商品Xが複数のもっと小さな商品の構成されている場合もあります。

商品Xの効用Yが20以上ならカレー屋さんではカレーライスを選んだ方が合理的、その逆ならエビフライカレーを選ぶ方が合理的になります。
商品Xの効用Yが20以上か20未満かはケースバイケースなので、高い方を選ぶほうがいいと決めつけることはできません。

じゃあ「迷った時は高い方を買う」が完全に間違いかというと、そうとも言い切れません。
どちらを選んだほうが得とも言えないということは、どっちでもいいということです。
どっちでもいい選択に悩んでは、無駄な時間と労力をかけてしまいます。
それならば初めから買い物で迷った時用のルールを決めて、迷った時は機械的に決めてしまうのが合理的だと考えられます。

つまりこの戦略の目的はあくまで「どっちでもいい選択にかけるコストを減らす」ことであって、ルールの中身自体は「迷った時は安い方を買う」でも「迷った時は商品名が長い方を買う」でもいいのです。
それを「高い方を買うのが合理的」と考えてしまうのは、手段の目的化です。